アパレルブランドの商標登録の方法

ここでは、アパレルブランドを商標登録する場合の基本的な方法や注意点をお伝え致します。

商標と商品

まずは、簡単に商標登録の基本からお伝えします。

特許庁に商標を登録すると、登録した商標を指定商品に独占使用できるようになります。
指定商品は、特許庁に商標を登録するための最初の手続である商標出願(商標申請)で決めた商品であり、その商標を使う商品を示すものです。
アパレル事業者様の場合は、通常、シャツ、パンツ、ジャケット、スカートなどの被服が指定商品となります。

このように、商標登録というのは、商標だけではなく、商標と商品がセットになっている制度なのです。

したがって、商標登録をしようという場合、商標と商品の両方を検討していく必要があります。

商標の種類

商標登録をする商標について、お伝えしていきます。

事業者様によっては、「何を当たり前のことを」とお思いになるかもしれませんが、アパレルブランドの場合、一般的には、次のような種類の商標が考えられます。

1.ロゴマーク
2.ブランド名のロゴ
3.ブランド名の文字

この説明だけでは、これら3種類の商標をイメージしにくいと思いますので、具体例を挙げて補足説明致します。

ロゴマークは、ルイ・ヴィトンの「L」と「V」の文字のモノグラムやラルフ・ローレンの「馬」と「ポロをしている人」のマークのように、記号や図形からなる商標です。

ブランド名のロゴは、イブ・サンローランのブランド名の「YVESSAINTLAURENT」の文字のように、ブランド名を特殊な書体で表示した商標です。

ブランド名の文字は、ブランド名をありふれた活字体で表示した商標です。

また、ロゴマークとブランド名のロゴを組み合わせて1つの商標にして商標登録するケースもあります。例えば、「馬に乗ってポロをしている人」の図形があって、その下に「POLO/RALPH LAUREN」という文字があるように、ロゴマークとブランド名ロゴを組み合わせた商標もよくあります。(この種類の商標を、便宜的に以下では、「ロゴマークとブランド名ロゴの組み合わせ」と呼びます。)

このように、1つのアパレルブランドでも、複数種類の商標が考えられますので、どの種類の商標を商標登録すべきか、ということは検討に値します。

商標を決める

次に、先程ご説明した複数種類の商標のうち、どれを商標登録すべきか、ということをお伝えしていきます。

これをお伝えするにあたり、なるべく多くの種類・パターンで商標登録をしておいた方が、商標を保護するという点では有利ですが、商標登録をするにもコストがかかりますので、商標登録をする件数を抑えることも考えなければならず、以下では、そのバランスを考慮してご説明致します。

ロゴマーク

ロゴマークがある場合、ロゴマークは是非とも商標登録をしておくべきです。
もし、ロゴマークを商標登録していないと、他社に同じようなロゴマークを使われても文句を言えませんし、他社に同じようなロゴマークを商標登録されてしまうと自社のロゴマークが使えなくなるためです。

ブランド名のロゴとブランド名の文字

ブランド名のロゴかブランド名の文字のどちらか一方は、是非とも商標登録をしておくべきです。
もし、商標登録していないと、ロゴマークの場合と同じように、同じようなブランド名を他社に使われても止めさせることができず、また、自社のブランド名が使えなくなるリスクがあるためです。

ブランド名のロゴとブランド名の文字のどちらか一方を商標登録するとして、ブランド名ロゴとブランド名文字のどちらを選ぶべきかという問題があります。
私見では、ブランド名のロゴを商標登録した方がよいと考えています。ブランド名ロゴの特殊な書体を他社がマネしたきたような場合に有利になるためです。
ただし、まだブランド名のロゴの書体が決まっていない段階であったり、近い将来ロゴの書体を変更する予定があるような場合は、ブランド名の文字で商標登録しておくべきです。

ロゴマークとブランド名ロゴの組み合わせ

ロゴマークと、ブランド名のロゴかブランド名の文字のいずれか一方を商標登録するとなると2件の商標登録が必要になります。

一方、ロゴマークとブランド名ロゴの組み合わせは、ロゴマークとブランド名のロゴを含めて1件の商標登録にすることができますので、コストパフォーマンスに優れている方法です。

他社に同じような商標を使わせないようにすることを重視するのであれば、組み合わせではなく、ロゴマークとブランド名のロゴ(又はブランド名の文字)を別々に2件の商標登録にすべきです。

商品を決める

商標登録では、商品やサービスが「第1類」から「第45類」までの45通りの「区分」という単位で分類されています。
したがって、商標登録において、商品を検討する場合、区分と指定商品を考える必要があります。

アパレルブランドを商標登録する場合の区分は、第25類になるのが一般的です。
第25類には、洋服、下着、和服、靴下、スカーフ、ネクタイ、帽子、ベルト、靴などの被服や履物が含まれます。
そのため、アパレルブランドの商標登録では、第25類だけを押さえておけば足りることが多いのですが、例えば、次のような商品やサービスは、第25類には含まれませんので注意が必要です。

アクセサリー、時計、バッグ、傘、財布、タオル、アパレルのネットショップ(小売業)

これらの商品・サービスは、第25類とは別の区分に入りますので、これらの商品・サービスのお取り扱いがある場合は、それらの別の区分も含めて商標登録するべきです。

指定商品は、区分に含まれる商品の普通名称を記載します。
指定商品は、不明確・不明瞭な記載は認められませんが、記載方法は裁量の余地がありますので、弁理士によって記載の仕方が違うこともあるでしょう。

弊所では、色々な場面を想定しつつ柔軟で、かつ、なるべく広い範囲で商標登録できるように、独自の指定商品の書き方を採用しています。

まとめ

商標登録は、商標と商品・サービスをセットで考えます。

一口に商標といっても、いくつかの種類の商標があり、商標の保護とコストのバランスを考慮して、適切な種類の商標を商標登録するべきです。

アパレルブランドの商標登録の場合、区分は第25類が基本ですが、アパレルブランドでよく取り扱われがちな商品が全て第25類に含まれている訳ではない点に注意が必要です。

2021年01月25日