「ユニクロ」の商標登録はどうなの?
カジュアル・ファッション・ブランドで日本を代表する「ユニクロ」の商標登録の状況は、どうなっているのか?
「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリングの商標登録の状況を調べて、アパレル事業者様のご参考になる点などをピックアップしてコメント致します。
ファーストリテイリング社の商標登録の全体像
2021年1月の調査時点で、ファーストリテイリング社の登録商標と出願中の商標は、全部で295件です。
以下、この295件の商標を前提にお話をしていきます。
そのうち、249件が登録商標で、残りの46件が出願中、つまり、特許庁の審査中か審査待ちの商標です。
また、「ユニクロ」または「UNIQLO」の文字を含む商標は、34件です。
このブログで何度かご紹介していますが、商標登録をする際には、商標を使う商品やサービスを決め、その商品やサービスが分類されている「区分」を決めます。
アパレルブランドの商標登録の場合は、「第25類」が衣料品を含む区分になりますので、最も基本的かつ中心的な区分になります。
ファーストリテイリング社の295件のうち、区分として第25類が含まれている商標は、240件です。
ファーストリテイリング社の初期の商標登録
ファーストリテイリング社の商標の中で、最も早く商標登録出願(特許庁に商標申請)されたのが「Unique Clothing Warehouse」で、1983年に出願されています。今から、40年近く前になります。
皆様ご承知の通り、以前は、この「Unique Clothing Warehouse」という名称で衣料品店を展開されていましたし、「ユニクロ」の語源となっている名称です。
「ユニクロ」商標の登場
1992年に、「ユニクロ」関連の初めての商標が出願されます。
↑↑↑これが、その商標です。
「UNI」と「QLO」の間に「-」が入っているのが、初めて見る方には違和感があるかもしれませんね。
また、今では見かけなくなった、男女が手をつないでいる図形のマークも含まれています。
その後、「-」が無く、普通の活字体の以下の「UNIQLO」商標が出願されます。
1994年「UNIQLO」(第16類)
1994年「UNIQLO」(第18類)
1999年「UNIQLO」(第9類)
これらの「UNIQLO」商標は、いずれもアパレル商標の基本区分の第25類を含んでいません。
2000年以降の「ユニクロ」商標
2000年に入り、ついに、普通の活字体の「UNIQLO」が第25類を含めて商標出願されます。
また、先代のロゴということになるのでしょうか、次のロゴも同時に商標出願されています。
2002年になると、カラーのロゴが商標出願されています。
そして、2006年には、カタカナの「ユニクロ」のロゴが商標出願されます。
小売業の商標登録制度にあわせて
2007年4月から、新しく「小売業」のサービスで商標登録を行えるようになりました。
逆に、それ以前は、「小売業」のサービス分野で商標登録はできなかったのです。
そのため、以前は、「ユニクロ」のような製造小売業の場合、製造業者として商品の衣料品の商標として商標登録を中心に行ってきたと思われますが、2007年4月以降、衣料品店の名称やロゴのように小売業者としての商標を商標登録することができるようになったのです。
これは、アパレルショップの実店舗に限らず、アパレルのネットショップの店舗名やロゴも小売業の商標として商標登録できるようになっています。
小売業は、商標の商品・サービスの区分でいうと、第35類になります。
小売業の商標登録制度がスタートしたことに伴い、ファーストリテイリング社も当時の「ユニクロ」関係の主要な商標について、2007年に第35類を含めた商標出願を行っています。
現行ロゴの登場
2009年に現行の「UNIQLO」ロゴが商標出願されます。
企業名の商標登録
ここまで、主に、ファーストリテイリング社の「ユニクロ」関連の商標を見てきました。
ここからは、別の観点で、ファーストリテイリング社の商標登録の状況を見ていきたいと思います。
企業名の「ファーストリテイリング」の商標登録ですが、最初に、2002年に「FAST RETAILING/ファーストリテイリング」が商標出願されています。
その後、「ファーストリテイリング」関連の商標が数件、商標登録されています。
ファーストリテイリング社の場合、厳密には、企業名は、商標・ブランドとしては使用していないと思いますので、その意味では商標登録は不要とも考えられますが、2002年には、同社も相当知名度が高くなっていたので、企業名の模倣等から防止するための措置として、企業名の商標登録を行ったものと思われます。
別業態(別ブランド)の商標登録
「ユニクロ」よりも安価で若者向けという位置付けなのでしょうか、ファーストリテイリング社が展開する「ジーユー」についても商標登録されています。
カタカナの「ジーユー」も商標登録されていますし、以下の旧ロゴと現行のロゴも商標登録されています。
ちなみに、普通の活字体で、アルファベット2文字又は1文字のみは、原則として商標登録できないという特許庁の商標審査基準があります。
「ジーユー」の旧ロゴはには、紫色の円の図形が含まれていますので、この審査基準には該当しません。
現行ロゴは、特許庁の審査で、一旦、上記審査基準に該当するので商標登録すべきでないと判断されましたが、審査の次の段階の審判で、当該審査基準に該当せず、商標登録すべきとの判断がされています。
いずれにしましても、別業態・別ブランド店舗の名称やロゴも忘れずに商標登録すべきです。
商品の機能をブランド化して商標登録
ファーストリテイリング社、ユニクロの特徴の1つなのでしょう。
商品の機能をブランド化して、高機能商品であることをアピール。
そして、そのブランド化した商品の機能の名前は商標登録ということで、例えば、次のような商標が登録されています。
「ヒートテック/HEAT TECH」
「ドライカジュアル/DRY CASUAL」
「AIRism」
商標といえば、商品ブランドや店舗ブランドを思い浮かべやすいですが、商品の機能をブランド化するのも差別化には有効な手段ですね。
時代の流れで商標登録
アパレルブランドという観点からは少し離れますが、時代の流れでしょうか、次のような商標が2019年に出願されています。
「UNIQLO WALLET」
「UNIQLO PAY」
電子マネーやスマートフォン決済サービスを連想させる商標ですね。
金融やコンピュータソフトウェアなどの分野の区分で商標出願されています。
こんな商標登録も!?
少し変わった商標ですが、このような商標も登録されています。
おそらく、ジーンズのお尻のポケットのステッチのデザインと思います。
ジーンズの場合は、このステッチのデザインがブランドになりますからね。
まとめ
ブランドロゴは、変更される場合がありますが、その場合、変更後の新ロゴでも商標登録をしておくべきです。
商品ブランドや店舗ブランドにはしていない企業名も場合によっては、商標登録をしておくべきです。
主力ブランドはもちろん、姉妹ブランドなどもしっかりと商標登録をしておくべきです。
商品の機能をブランド化することは、差別化に有効で、そのような機能名も商標登録できます。
ジーンズのポケットなど、商品の一部のデザインを商標登録をして守ることが可能な場合もあります。